10th special interview
STORY02

オペラ歌手として、そして、声楽の教授やコンクールの主催・運営・審査員として日々大活躍中の金澤澄華さん。日本とイタリアを行き来し、ヨーロッパを中心に各国でオペラの素晴らしさを届けていらっしゃいます。
今回はまさに「世界中を翔けめぐる」澄華さんに、オペラの魅力や、2023年にユネスコ無形文化遺産として登録された『イタリアのオペラ歌唱』について伺いました。独自で考案された、身体を楽器にする『Bella Voceメソッド』、日本人が世界で活動するために挑戦したこと、誰でも再現・習慣化できそうな「心と身体の整え方」にもご注目ください。

「椿姫」の魅力に惹かれオペラの道を目指す
「椿姫」の魅力に惹かれオペラの道を目指す

「椿姫」魅力に惹かれ
オペラ目指す

わが家は特に音楽一家ではなかったのですが、母が歌うのが好きで、いつも身近に音楽がありました。最初はピアノから音楽に親しみ、中学卒業後は音楽高校に進みました。
オペラを好きになったきっかけは、高校の時に初めて観た「椿姫」です。普段聴く音楽とは違い、マイクを使っていないのに、驚く程の声量で迫力満点。「自分もあんな風に歌えるのかしら?」という素朴な疑問からこの道を目指しました。
また、舞台には合唱やオーケストラの方やバレエ…とあらゆる芸術が盛り込まれていました。そんな、プロが作り上げる華やかさにも圧倒されましたね。

身体を楽器にして歌う、
「イタリアオペラ歌唱法」への道

身体を楽器にして歌う、「イタリアオペラ歌唱法」への道
身体を楽器にして歌う、「イタリアオペラ歌唱法」への道

その後、音楽大学を卒業して諸先生方の指導を受け、イタリアに渡りましたが、発声や歌い方の違いに驚き、海外の歌手の方のように歌うには、身体自体を改造しなければたどり着かないと気づきました。そこで、古武術やダンスの先生に専門的なお話を伺いにいったり、使っていない筋肉を動かすため、針治療を行ったりと身体に向き合ったんです。
こう見えて、身体に関してはオタク(笑)。ひとつのことに集中しちゃうんです。

一般的には、自分に備わった素養を伸ばすと考えられ、誰も楽器である「身体を変える」という発想をしなかったようですが、やっていくうちに自分の使ったことがない筋肉が発達し、変化に気づけたんです。こうして10年間イタリア歌唱法を追求し、まさに「破壊と再生」を繰り返して、ようやく自分のメソッドにたどり着けたと思います。

大切にしているのはコミュニケーション・言葉・礼儀

大切にしているのは
コミュニケーション・
言葉・礼儀

さて、私は「コミュニケーション・言葉・礼儀」の3つを心がけています。
まず「コミュニケーション」ですが、これは人にも自分にもそうですが、特に自分との対話に時間をかけます。声はとてもデリケートかつ、目では見えない楽器。ですから都度「とことん頑張る? 少しだけやる? 今日は休む?」と自分の身体と心に訊いています。やはり答えは自分の中にしかないんですよね。

大切にしているのはコミュニケーション・言葉・礼儀

次に「言葉」。歌は、音楽の中で唯一言葉を使いますが、外国語の意味が通じなかったとしても、意味を理解して大切に歌えば、不思議と伝わる。「思いが言葉を超える」という経験を何度もしてきたので、海外公演の際にもとても大切にしています。
とはいえ指導の際には時と場合、相手により捉え方が異なるので、言葉選びや言葉遣いには細心の注意を払っています。

最後は「礼儀」です。芸事は礼に始まり礼に終わるという考えは、時代を経ても変わりませんので、共演者の方々やお客様はもちろん、初日は会場や舞台にもご挨拶します。日本人ならではの繊細さ、ちょっとした心遣いや挨拶はコミュニケーションの橋渡しにもなるので、とても大切にしています。

身体を鍛える心も整う。
「体・心・技」という考え方

身体を鍛えると心も整う。「体・心・技」という考え方
身体を鍛えると心も整う。「体・心・技」という考え方

いろいろな場所に行ったり1日にたくさんの方と接することで、「気」のようなものに巻き込まれ、疲れてしまうことが多かったんです。敏感さは音楽を仕事にする上で大切なんですが、やはり辛くて…。
でも、筋肉や骨格を変えるために身体を整えたことで、そういう疲れがなくなったんです。「心・技・体」ではなく、「体・心・技」の順が大事だというのが経験から得た持論です。

さらに、体力勝負のこの仕事を支えるのは、ズバリ睡眠と栄養。特に個人的には睡眠確保が一番なので、7時間は寝ます。舞台終演後にはトーンダウンをするため、ハーブティーを飲んだり瞑想で落ち着き、悩んでいてもベッドに入ったら一切考えない(笑)!
栄養面では朝に野菜を採ったり、疲れた時はハチミツレモンを食べます。ハチミツとレモンはどの国にもあって喉にも良く、予想以上に効果抜群なのでオススメですよ。

「音楽で人と繋がれる」
「音楽が癒やしになる」
そんな素晴らしさ伝えることが、
私の使命

同じ環境の女性と歩きながら、ゆくゆくは「全力さん」と呼ばれたい
同じ環境の女性と歩きながら、ゆくゆくは「全力さん」と呼ばれたい

世界には舞台だけに専念する方も多いです。でも私は、イタリアで暮らし舞台に立ってきて、何度もくじけそうになったけれど、周りのお陰でなんとかやってこられました。ですからこれらの「経験・技術・精神的なもの」を全て伝えていきたいんです。歌のテクニックはもちろん、チャレンジすることの大切さ、何より「音楽で人と繋がれる」「音楽が癒やしになる」素晴らしさを伝えることが、私の使命だと感じています。

やってみたいことはたくさんありますが、これからも音楽に真っ直ぐに向かっていきます。そして一人でも多くの方に、オペラや声楽の魅力をお伝えしていきたいですね。

【金澤さんのMDNA SKIN
お気に入りアイテム】
ザローズミストは香りでリフレッシュできる、私の大好きなアイテム。顔や身体はもちろん、髪にも利用してバラの香りに包まれ、幸せになります。

【MDNA SKINで印象的だったこと】
MDNA SKIN10周年のパーティーで歌う機会を頂けて大変光栄でした。皆さんが私の歌に真剣に耳を傾けてくださっているのがわかり、イタリアオペラの魅力をお伝えできたこと、会場の皆様と音楽の時間を共にできたことに、歌手としての充実感を感じました。
※弊社からご出演を依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しております。

  • 金澤澄華(かなざわ すみか)
  • オぺラ歌手
  • Bella Voce Academy 校長

武蔵野音楽大学大学院音楽研究科 修士課程修了。
第10回L.チェッリテッリ国際音楽コンクール声楽部門優勝、岐阜県文化・スポーツ功績賞を受賞。M・グリエルミ、N.カルツィー、F.チェドリンス各氏の下で研鑽を積む。名古屋二期会「ラ・ボエーム」ムゼッタでデビュー後、数々のオペラに出演。
プッチーニフェスティヴァル、ミラノスカラ座オペラ研修所合唱団として研鑽。アローナ市劇場、ベルガモ夏の音楽フェスティヴァル「トューランドット」リュー役で出演。2018~2020にはパルマ王立歌劇場の合唱団員として欧州各地の公演に出演。第2回F.チェドリンスオンラインクラッシクヴォイスコンクール歌曲特別賞受賞。
現在はイタリアをはじめ、欧州各地、日本でソリストとして活動。『Bella Voce Academy』校長として教鞭にたつ。(一社)イタリア音楽振興会代表理事。YouTubeチャンネルは、専門分野ながら1万人の登録数を誇る。

インタビュアー/ライター 増田 有香(綴屋 https://tsuzuriya.jp/)

撮影 臼井さや香(IMA photography http://jotatu.jp)